[2]難聴は治せるケースもある?種類と治療・予防のポイント

聞こえを守るためには、まず“聞こえにくさの正体”を知ることが欠かせません。難聴の背景にはさまざまな原因があり、補聴器を正しく使えば、日常生活がぐっと快適になるケースも多くあります。そこでドクターインタビューの第2回目では、難聴の種類や治療法、そして日常で意識したい予防のポイントについて、耳の健康に精通する「立川駅前おといろ耳鼻咽喉科」の小島敬史先生に伺いました。

まず知っておきたい、難聴の種類と原因

――難聴には、どんな種類があるんでしょうか。

耳は「音を伝える部分」と「音を感じる部分」に分かれ、どこにトラブルが起きるかで難聴の種類が変わります。このうち、音を伝える部分に問題があるのが「伝音性難聴」、音を感じる部分に問題があるのが「感音性難聴」です。まずはこの2つに大きく分けられます。さらに、この2つが同時に起きてしまう「混合性難聴」という状態もあります。

――それぞれ耳の中でどんなトラブルが起きているんですか?

まず、伝音性難聴は“音を伝える部分”にトラブルが起きている状態です。外耳や中耳に、形の異常や耳垢の詰まり、炎症などがあると、音が鼓膜から内耳までうまく届かなくなります。具体的には、耳垢が詰まってしまう「耳垢栓塞」や、鼓膜に穴が開く「鼓膜穿孔」、鼓膜の内側に水が溜まってしまう「滲出性中耳炎」といった病気があげられます。

一方の感音性難聴は、内耳にある“音を感じる”部分である有毛細胞や、その奥の神経にダメージが起きている状態です。年齢とともに少しずつ聞こえが低下していく「加齢性難聴」をはじめ、突然片耳の聞こえが悪くなる「突発性難聴」、めまいや難聴などが繰り返し起こる「メニエール病」などがこれにあたります。

混合性難聴は、伝音性と感音性が同時に起きている状態です。伝音性のトラブルが長く続くと内耳にも影響し、混合性難聴に移行することがあります。

改善できるケースも!種類によって異なる治療の方向性

――治療の方向性についても教えてください。

伝音性難聴は、原因が比較的はっきりしていることが多く、手術や処置、薬によって改善できる可能性があります。外耳の耳垢を取り除いたり、中耳の炎症などを治療したりすることで、聞こえが回復するケースもあるんです。

一方、感音性難聴は、現状の医学では原因が特定しきれておらず、治療が難しいことが多いとされています。そのため、聞こえを補う補聴器の装用が主な治療方針になります。それでも改善が難しい場合には、人工内耳という選択肢もあります。

混合性難聴の場合は、まず伝音性の部分を治療し、そのうえで残った感音性の部分に対して補聴器などを検討する、というように両方の側面からアプローチする必要があります。

――治る可能性がある難聴もあるんですね。

そうなんです。特に伝音性難聴は、適切な治療や処置をすれば治る可能性が高い難聴です。本来は治療すれば治るものを、「年齢のせいだから仕方ない」と思い込んでしまうのは本当にもったいないことです。少しでも聞こえにくいと感じた時点で、ぜひ耳鼻科にご相談ください。
一方で、治りにくいとされている感音性や混合性の場合でも、諦める必要はありません。補聴器を正しく使えば、聞こえを補うことができ、快適に日常生活を送れるケースも多々あります。

聞こえを守るために。今日からできる予防習慣

――難聴を予防するために日常生活でできることはありますか。

まず伝音性難聴の予防で大切なのは、中耳炎を放置しないこと、そして鼻をすする癖を避けることの2つです。鼻すすりは、伝音性難聴の原因となる「真珠腫性中耳炎」という病気のリスクを高めると言われています。アレルギー性鼻炎などで鼻をすすりがちな方は、点鼻薬を使ったり、必要に応じて治療を受けたりすることで予防につながります。

感音性難聴では、大きすぎる音を長時間聞かないことが大切です。強い音を浴び続けると、内耳の有毛細胞に負担がかかり、気づかないうちに聞こえが悪くなってしまうことがあります。家族に、テレビやラジオの音が大きいと指摘されたことのある方は、音量の上げすぎに気をつけましょう。
また、日常的にイヤホンを使う人も注意が必要です。ノイズキャンセリング機能やスマートフォンの音量管理機能を活用し、できるだけ大きな音を聞き続けないように意識すると安心です。

――感音性難聴の中には「加齢性難聴」も含まれますよね。加齢性難聴は予防できるのでしょうか。

「これをすれば確実に防げる」という方法はありませんが、大きな音を聞き続けないことに加えて、生活習慣を意識することで難聴のリスクを減らせる可能性はあります。適度な運動や規則正しい睡眠、血管に負担をかける要因を減らすことなど、全身の健康につながる習慣は耳にも良い影響を与えると考えられています。
特に運動は、週3日以上・1回30分程度の散歩など、無理のない範囲で続けるのがおすすめです。睡眠については、長さよりも“毎日同じ時間に寝て起きる”というリズムを意識しましょう。必要な睡眠時間は人によって異なるため、数字にこだわる必要はありません。また、寝酒は睡眠の質を下げてしまうため控えた方が安心です。

――最後に混合性難聴の予防方法はありますか?

混合性難聴は、伝音性難聴が進行した際に起きることが多いため、基本的な対策は伝音性難聴と同じと考えてよいでしょう。
また、種類にかかわらず、難聴と診断された場合は定期的な検査が重要です。状態を継続的に確認することで、進行の早期発見や、適切な治療方針の判断に役立ちます。「以前、難聴と言われたけど放置してしまっている」という方はもちろん、「最近、聞こえにくい」「家族から耳の遠さを指摘された」という方も、まずは耳鼻科を受診することが大切です。

次回は、聞こえを保つことが日々の健康や生活にどんな良い変化をもたらすのか、そして補聴器がその助けになる理由について、さらに詳しくお伝えします。
 

監修

小島 敬史

立川駅前おといろ耳鼻咽喉科 院長
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定 補聴器相談医
補聴器適合判定医師研修会 修了

全例で補聴器適合検査を行い、補聴器の処方についても自ら特性図・適合検査結果を確認、調整の指示を行っている。

経歴

2006年3月 慶應義塾大学医学部医学科 卒業
2008年3月 佐野厚生総合病院 初期臨床研修修了
2008年4月 慶應義塾大学耳鼻咽喉科学教室所属
2013年9月 慶應義塾大学病院 助教として勤務
難聴/耳鳴外来と小児難聴外来を担当
2015年4月 町田市民病院 補聴器外来立ち上げ
2018年8月 米国 ノースウェスタン大学耳鼻咽喉科で
遺伝性難聴の基礎研究に従事
2026年4月 立川駅前おといろ耳鼻咽喉科 開業

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