風邪をひいたときに「耳がこもる」「聞こえにくい」と感じて、不安になった経験はありませんか?こういった症状の多くは鼻や耳の一時的な変化で起こるものですが、なかには注意が必要なケースもあり、見分けがつかず悩む方も少なくありません。
この記事では、風邪によって耳が聞こえにくくなる原因や症状、治し方、受診の目安についてわかりやすく解説します。風邪による耳の違和感が気がかりな方は、正しい知識を身につけて適切に対処できるようにしましょう。
風邪をひくと耳が聞こえにくくなるのはなぜ?

風邪をひくと耳が聞こえにくくなるのは、耳と鼻をつなぐ「耳管(じかん)」の働きが一時的に低下するためです。多くは風邪の回復とともに自然に改善しますが、特に高齢者や子どもでは悪化しやすく、症状が長引く場合は注意が必要です。
耳と鼻は「耳管」でつながっている
耳の奥にある「中耳(ちゅうじ)」と鼻の奥は「耳管」という細い管でつながっており、この耳管は中耳の気圧を調整する重要な役割を担っています。
たとえば飛行機の搭乗中や登山の際に耳が詰まる感じがするのは、高所への移動による気圧の変化によって耳管の働きが影響を受けるためです。耳管内と外部環境の圧力差が生じ、中耳が押されることで「キーン」といった痛みや詰まりが生じてしまいます。
一方、風邪はウイルス感染によって、鼻や喉(上気道)に炎症が起こる病気で、鼻水や鼻詰まり、痰、喉の痛みなどの症状が特徴です。こうした炎症は耳管の入り口付近にも及び、耳管の粘膜が腫れることがあります。
さらに、鼻詰まりが起こると耳管の開閉がしにくくなり、中耳の圧をうまく調整できなくなります。その結果、耳管の働きが一時的に低下し、耳の詰まりや聞こえにくさといった症状が現れるのです。
耳管がうまく開かないと耳が詰まった感じになる
耳管が腫れて開きにくくなると、中耳の内部は外気よりも圧が低い状態になり、鼓膜が内側へ引き込まれます。その結果、音の振動が正常に伝わらなくなり「音がこもる」「耳が詰まった感じがする」「聞こえにくい」「自分の声が響いて聞こえる」といった症状が現れます。これらの症状は「耳閉感」と呼ばれ、日常生活に違和感を与えることも少なくありません。
高齢者や子どもは耳の詰まりを感じやすい
高齢者は加齢に伴い耳管の働きが低下しやすく、風邪をきっかけに耳の詰まりを感じやすいです。さらに多くの場合、加齢性難聴が背景にあるため、耳管機能の低下が重なることで、普段以上に聞こえづらさを感じる場合があります。
一方、子どもは耳管が大人より短く、ほぼ水平に近い角度で鼻とつながっているため、鼻や喉の炎症が中耳へ広がりやすい構造をしています。そのため、風邪をきっかけに中耳炎を起こしやすいです。
風邪をひいたときに耳が聞こえにくくなる多くのケースは、耳管のむくみによる一時的なもので自然に改善することもあります。しかし、症状が長引く場合や、日常生活に大きく支障をきたしている場合、気がかりな症状がある場合には、早めに耳鼻咽喉科を受診することが重要です。
風邪による耳の症状

風邪によって起こる耳の症状は、主に以下になります。
- 耳がこもる
- 聞こえにくい
- 耳が詰まる
- 自分の声が響く
- 軽い耳鳴り
音がこもって聞こえたり、自分の声が大きく響いたりするのは、鼓膜の動きが一時的に悪くなるためです。
鼻がそれほど詰まっていない場合でも、耳管の粘膜が腫れることで「耳管狭窄症」が起こり、同様の症状が現れる場合があります。違和感が続くと不安に感じることもありますが、多くは風邪の回復とともに自然に改善していきます。
注意が必要な症状
ただし、片耳が明らかに聞こえないと感じたり、耳鳴りや吐き気、めまいなどを伴ったりする場合には注意が必要です。これらは「突発性難聴」の可能性があり、治療の開始が遅れるほど回復が難しくなるとされています。少しでも気になる症状があれば、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診することが大切です。
また、目の前がぐるぐる回る強いめまいが繰り返し起こる場合は、風邪ではなくメニエール病など別の病気が原因となっている可能性もあります。このような場合も自己判断せず、早めに耳鼻咽喉科の診察を受けるようにしましょう。
これらの疾患の詳細は以下の記事で解説していますので、そちらも併せてご覧ください。
風邪で耳が聞こえにくい場合の治し方

風邪で耳が聞こえにくくなる場合は、耳そのものではなく、鼻や喉の炎症や鼻詰まりが原因となっていることが多いです。適切な対処法や十分な休養などのセルフケアによって、耳の詰まりや聞こえにくさの改善が期待できます。
鼻の通りを良くする
耳の不調は、鼻の奥の炎症や鼻詰まりによって起こるケースがほとんどです。まずは鼻の通りを良くするように努めましょう。鼻の状態が改善すると耳の違和感も軽くなる可能性が高まります。
●蒸しタオルや入浴で鼻を温める
蒸しタオルを鼻に当てたり、ゆっくり入浴したりして鼻まわりを温めると、血行がよくなります。それにより、粘膜のむくみや腫れがやわらいで鼻の通りが改善しやすくなります。
●鼻うがいをする
生理食塩水や専用の洗浄液を使った鼻うがいは、鼻の奥にたまった鼻水や膿などを洗い流すのに役立ちます。市販の洗浄器具を使う場合は、使用方法を守り、無理のない範囲で行うことが大切です。
●点鼻薬を使用する
鼻詰まりの症状が強い場合、血管収縮剤が含まれている点鼻薬を使用することで、一時的に症状が和らぐ場合があります。しかし、使いすぎると逆に鼻炎が悪化する可能性があるため、必ず説明書を読み、用法・用量を守って使用しましょう。
●室内を加湿する
空気が乾燥していると鼻の粘膜が吸気を加湿するため、鼻水が増えやすくなります。そのため、対策として加湿器や濡れタオルなどで室内の湿度を保ちましょう。粘膜の乾燥を防ぎ、鼻水の状態が改善しやすくなる可能性があります。

●鼻をやさしくかむ
鼻をかむ際はティッシュで片方ずつやさしく行うようにしましょう。両方の鼻を強くかむと、鼻や耳に強い刺激が加わって逆効果になることがあります。また、鼻水をすすり上げると細菌が耳管から中耳に入り込んで、中耳炎の原因となる場合もあるため控えましょう。
これらの対策で鼻詰まりが落ち着くと、耳管の通りもよくなり、耳の詰まりや聞こえにくさが和らぐことがあります。
耳抜きをする
耳抜きは、飛行機に乗ったときなどで行われる一般的な方法で、耳管に空気を通して中耳の圧を調整する効果があります。鼻を軽くつまんで口を閉じ、鼻から息を吐くように力を入れることで、耳の詰まりが改善するケースも多いです。
また、鼻をつまんだ状態で唾を飲み込む、飴をなめる、ガムを噛むといった方法でも、自然に耳管が開きやすくなります。日常的に取り入れやすい方法としておすすめです。
ただし、強く息を吹き込むと耳に負担がかかり、逆に症状を悪化させる可能性があるため、無理に行うのは避けましょう。違和感が強い場合は無理をせず、様子を見ることが大切です。
体を休めて風邪を治す
耳の聞こえにくさが風邪によるものであれば、原因となっている風邪そのものを早く治すことが重要です。そのためには、体をしっかり休め、免疫力を高めることが基本となります。
以下のような基本的な体調管理を意識しましょう。
- できるだけ十分な休息をとる
- 栄養バランスのよい食事を心がける
- 睡眠時間をしっかり確保する
特に、体が疲れている状態では回復が遅れやすく、炎症も長引く傾向があります。無理をして仕事や家事を続けるよりも、まずはしっかりと休養をとることが大切です。焦らずに体の回復を優先することが、結果的に耳の症状の改善にもつながります。
風邪による耳の症状はいつ頃治る?

風邪が原因で起こる耳の詰まりや聞こえづらさは、多くの場合、数日で改善します。これは、風邪による鼻や喉の炎症が落ち着くにつれて、耳と鼻をつなぐ耳管の働きが徐々に回復するためです。ただし、明らかに聞こえが悪い場合は突発性難聴の可能性もあり、すぐに受診したほうが良いでしょう。耳管自体に炎症が起きている場合は、風邪の症状がほとんど治っているにも関わらず、耳の症状だけが残るケースもあります。
症状が長引く場合は悪化している可能性も
一方で、それ以上長く症状が続く場合は注意が必要です。鼓膜の内側に液体がたまる「滲出性中耳炎」、鼻の「副鼻腔」という空間に炎症が起こる「急性副鼻腔炎」、気管支の粘膜に炎症が広がる「気管支炎」などが起きている可能性もあります。これらが発症した場合は自然に治りにくく、専門的な治療が必要です。
特に高齢者は、もともとの難聴によって変化に気づきにくい傾向があります。また、子どもは痛みを伴わない滲出性中耳炎になりやすく、年齢によっては自分で症状をうまく伝えられないこともあります。
聞こえづらさや耳の違和感が続く場合、また家族が異変に気づいた場合は放置せず、早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。
風邪で耳が聞こえにくい場合の受診目安

風邪によって耳が聞こえにくくなる症状は、多くの場合、一時的なもので体の回復とともに自然に改善します。しかし、3日以上続く場合は早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。耳管のむくみだけでなく、中耳炎など別の病気が関係している可能性もあるためです。
また、症状が長引いていなくても、次のような症状がみられる場合は注意しましょう。
- 強い耳の痛み
- 発熱
- めまい
- 耳鳴りが強い
- 急に聞こえなくなった
これらは重い炎症や突発性難聴などの可能性もあり、早期に治療を開始することが重要です。特に「急に聞こえなくなった」場合は緊急性が高いため、できるだけ早く受診するようにしましょう。違和感を軽視せず、早めの対応を心がけることが大切です。
まとめ:風邪による耳の不調を早く改善するために

風邪をひくと耳が聞こえにくくなるのは、耳管の働きが一時的に低下することが主な原因で、多くは風邪の回復とともに自然に改善します。症状が3日以上続く場合や、強い耳鳴り、めまい、急な難聴などを伴う場合は注意が必要です。早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
また、症状を早く改善するためには、日常生活でのセルフケアも重要です。鼻の通りを良くする工夫や室内の加湿、十分な休養をとることで、耳管の働きが回復しやすくなります。特に無理をして症状を悪化させないよう、体調管理を意識することが大切です。
耳の違和感は軽く見られがちですが、放置すると悪化したり、別の病気が隠れている場合もあります。少しでも不安を感じた場合は早めに対応し、適切なケアと受診を心がけましょう。
執筆
聞こえと暮らし研究所 編集部
聞こえや難聴に関する正しい理解を広めるとともに、補聴器をはじめとする聴覚ケアの最新情報や、快適な聞こえを支える工夫を発信しています。日々の暮らしに寄り添う情報提供を通じて、聞こえに悩む方々の生活の質(QOL)向上に貢献していきます。
監修
小島 敬史
現国立病院機構栃木医療センター耳鼻咽喉科医長。
全例で補聴器適合検査を行い、補聴器の処方についても自ら特性図・適合検査結果を確認、調整の指示を行っている。
【略歴】
2006年、慶應義塾大学医学部卒。臨床研修修了後、2008年より同大学耳鼻咽喉科学教室へ所属。日本耳鼻咽喉科学会専門医、指導医取得。耳科、聴覚を専門とし、臨床研究や基礎研究に従事する。2018年から2020年、米国ノースウェスタン大学耳鼻咽喉科頭頸部外科でポストドクトラルフェローとして先天性難聴の蛋白機能解析に関する基礎研究に従事。2013年慶応義塾大学病院耳鼻咽喉科で難聴・耳鳴外来を担当。宇都宮方式での補聴器処方を学ぶ。