めまいと難聴はなぜ同時に起こる?原因となる病気と危険な症状を解説

2026.05.08
難聴

めまいと難聴は別々の症状に思われがちですが、実は同じ原因から同時に起こることも少なくありません。背景には、耳の奥にある内耳や、聴神経、脳の病気が関係している場合があります。なかには、放置すると重い後遺症や命に関わる緊急性の高い病気が含まれていることもあるため、注意が必要です。

この記事では、めまいと難聴が同時に起こる理由や考えられる病気、危険な症状の見分け方などについて詳しく解説します。めまいや聞こえの異変が気になっている方は、ぜひこの記事を参考にして、早めに適切な行動を取る判断材料にしてください。

めまいと難聴の関係とは?

めまいと難聴は、一見すると別々の症状のように感じられますが、原因が耳の奥にある「内耳」である場合、同時に起こることが少なくありません。これは、音を聞く働きと体のバランスを保つ働きが、どちらも内耳で行われているためです。

そのため、めまいと難聴が同時に起こる場合は、耳の病気が関係している可能性を考える必要があります。

耳の構造と働き

耳は大きくわけて、外耳・中耳・内耳の3つの部分から成り立っています。このうち、めまいや難聴と深く関係しているのが内耳です。

内耳には、音を感じ取る役割を持つ「蝸牛(かぎゅう)」と、体のバランスを保つ役割を持つ「三半規管」があります。

蝸牛の内部はリンパ液で満たされており、その中に多くの有毛細胞が並んでいます。音の振動がリンパ液を介して有毛細胞に伝わることで電気信号が発生します。その電気信号が聴神経を通って脳に伝えられることで、私たちは音を「聞こえた」と認識するのです。

一方、三半規管も同じようにリンパ液で満たされています。体を動かすとリンパ液が動き、その動きが電気信号として脳に伝わる仕組みです。脳はその情報をもとに全身の筋肉に指令を出し、姿勢やバランスを無意識のうちに調整しています。

めまいと難聴が同時に起こりやすい理由

蝸牛と三半規管は内耳の中で隣り合って存在しているため、どちらかに障害が起こると、もう一方にも影響が及びやすい特徴があります。その結果、めまいと難聴が同時に起こるだけでなく、耳鳴り、吐き気、ふらつきなどの症状を伴うこともあります。

これらの症状が起こる代表的な疾患は、突発性難聴やメニエール病などです。また、内耳だけでなく、聴神経や脳に原因がある場合にも、めまいと難聴が同時に現れることがあります。

なかには、早急な対応が必要な緊急性の高いケースもあるため、めまいや難聴が同時に起こった場合は様子を見るだけではなく、早めに医療機関を受診することが重要です。

めまいと難聴が起こる病気

めまいと難聴が同時に起こる背景には、内耳や聴神経、脳などの病気が関係していることがあります。

以下に代表的な病気を紹介します。なお、これらの病気以外に、加齢によって起こる難聴でもふらつきやめまいを感じることがあるため注意しましょう。

突発性難聴

突発性難聴は、前触れもなく突然、片耳の聞こえが悪くなる病気です。難聴と同時に、耳鳴りやめまい、吐き気、耳のつまり感などの症状を伴うこともあります。

有毛細胞が何らかの原因で障害され、音の情報が脳へうまく伝わらなくなることによって生じると考えられています。原因ははっきりしていませんが、血流障害やウイルス感染などが関与している可能性が指摘されています。ストレスや過労、睡眠不足、糖尿病がある人に発症することが多いです。

突発性難聴は、治療の開始が遅れるほど回復が難しくなる病気です。発症後1週間以内に治療を受けた場合、約4割の人が完治するといわれています。後遺症を残さないためにも、急な聞こえの変化やめまいを感じた場合は、早急に医療機関へ受診しましょう。

メニエール病

メニエール病は、内耳にあるリンパ液が過剰にたまる(内リンパ水腫)ことで、蝸牛や三半規管が圧迫される病気です。目の前がぐるぐる回るような回転性のめまいが繰り返し起こるのが特徴で、難聴や耳鳴り、耳の詰まった感じ、吐き気などを伴うのが特徴です。

症状は発作的に現れ、良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多く、日常生活に大きな影響を与える場合もあります。

メニエール病は、ストレスや過労、睡眠不足などによる自律神経の乱れが引き金となって起こりやすいですが、原因は現在も完全に解明されていません。症状がなかなか改善しない場合は、めまい外来などの専門的な診療を受けながら、自分に合った治療法を探していくこともあります。

聴神経腫瘍

聴神経腫瘍は、聴神経を包んでいる部分に発生する良性の腫瘍です。中年以降に発症することが多く、ほとんどの場合、腫瘍はゆっくりと大きくなります。

腫瘍が徐々に増大することで、片側の難聴、めまい、耳鳴り、耳のつまり感などの症状が現れる場合があります。進行が緩やかなため、初期には気づきにくいケースも少なくありません。
突発性難聴や原因不明の難聴と言われている人があとからこの診断がつく場合もあり、左右で聴力の差がある場合、診断すべき疾患の一つとなります。

脳血管疾患

脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患によっても、めまいや難聴が起こることがあります。特に、大脳と脊髄を結ぶ位置にある「脳幹」や「小脳」が障害された場合に症状が現れやすいです。

この場合、めまいや難聴に加えて、手足の麻痺・しびれ、感覚障害、運動失調、眼振、激しい頭痛、ろれつが回らない、意識障害などを伴うことがあります。命に関わる可能性もあるため、これらの症状が見られる場合は、緊急性が高い状態として速やかな医療機関への受診が必要です。

危険なめまいの特徴は?

めまいのなかには、早急な対応が必要になる危険なケースもあります。

特に注意が必要なのが、脳血管疾患が原因となるめまいです。この場合安静にしても改善しない強いめまいとして現れることが多く、手足の麻痺やしびれ、激しい頭痛などの上述した神経症状を伴うことがあります。また、どれだけ頑張っても座った姿勢が保てなくなる、というのも脳血管疾患によるめまいの特徴です。これらの症状が見られる場合は、迷わず救急要請を行うことが重要です。

また、突発性難聴も迅速な対応が求められる病気です。前触れもなく「急にテレビの音が聞こえにくくなった」「電話の声が聞こえなくなった」などの症状が現れ、めまいや耳鳴り、吐き気を伴う場合は注意が必要になります。突発性難聴は治療開始が遅れると回復が難しくなるため、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診し、適切な治療を受けることが大切です。

めまいと難聴が起こる病気の治療法

めまいと難聴が同時に起こる病気では、原因となる疾患ごとに治療法が大きく異なります。
なかには早期治療が回復の鍵となる病気や、緊急性の高いケースもあるため、症状に応じた適切な対応が重要です。ここでは代表的な疾患の治療法について解説します。

突発性難聴の治療法

突発性難聴では、できるだけ早く治療を開始することが最も重要です。主な治療として、内耳の炎症や血流障害を改善することを目的に、副腎皮質ステロイド薬を内服または点滴で投与します。

また、症状や経過に応じて、血管拡張薬、ビタミンB12製剤、代謝促進薬などが併用されることもあります。ストレスや過労が過剰にたまっている場合は、安静をとることも重要です。

標準的な治療で十分な回復が得られない場合には、耳の中に直接ステロイド薬を注入する「ステロイド鼓室内投与」が行われることもあります。

メニエール病の治療法

メニエール病の治療は、内耳にたまったリンパ液を緩和することが中心です。

循環改善剤、血管拡張剤、ビタミン剤、利尿剤などを用い、末梢血管の血流を改善したり、体内の余分な水分を排出したりします。めまい発作が強い場合には、症状を抑えるために鎮痛剤や鎮静薬が使用されることも多いです。症状が繰り返し起こり、薬物療法で十分な効果が得られない場合には、内リンパ液を減らすための手術が検討されることもあります。

現在のところ、メニエール病には明確な根本治療がみつかっておらず、症状を抑える対症療法が一般的です。

聴神経腫瘍の治療法

聴神経腫瘍の治療は、腫瘍の大きさ、進行速度、聴力低下の程度、年齢などを考慮して決定されることが多いです。

腫瘍の増大を抑える目的で「ガンマナイフ治療」という放射線治療が行われることがあります。また、腫瘍が大きい場合や症状が進行している場合には、外科的に腫瘍を摘出する手術療法が選択されるケースもあります。

これらの治療によって、めまいの改善が期待できる可能性はありますが、低下した聴力が元に戻るのは難しい場合がある点に注意が必要です。

脳血管疾患の治療法

脳血管疾患によるめまいや難聴の治療は、病態によって大きく異なり、緊急対応が必要な場合もあります。血栓の拡大を防いだり、脳のむくみを抑えたりするための薬物療法で対応できるケースもあれば、脳内にできた血腫を除去するための手術が行われることもあります。

症状が急激に進行する場合は、一刻を争う状況となるため、迅速な診断と治療が命を守る鍵です。

めまいの対処法

めまいの中には、脳血管疾患などで緊急の対応が必要なものもありますが、メニエール病のように繰り返し起こるタイプのめまいも少なくありません。その場合、発作が起きたときの正しい対処法を知っておくことで、症状の悪化を防ぎ、落ち着いて行動できます。

水分をしっかりとる

めまいが起こりやすい人は、水分不足が関係していることがあります。水分をしっかりとることで、内耳にあるリンパ液の循環が促され、めまいの症状が和らぐ場合があります。

特にメニエール病では、内耳のリンパ液のバランスが崩れることが症状の一因と考えられているため、日頃からこまめな水分補給を心がけることが大切です。アルコールやカフェインを含む飲み物は控えめにし、水やお茶などを少量ずつ摂取するようにしましょう。

安静にする

めまいを感じたら、無理に動かず安静にすることが基本です。転倒やケガを防ぐためにも楽な姿勢で横になり、めまいが落ち着くまで体を休めましょう。

急に立ち上がったり、頭を大きく動かしたりすると、症状が悪化することがあるため注意が必要です。めまいが治まるまではできるだけ体を動かさず、静かに過ごすことが大切です。

刺激を避ける

めまいが起きているときは、視覚や聴覚への刺激をできるだけ避けることも重要です。明るすぎる照明やテレビ、スマートフォンの画面、大きな音などは、症状を強める原因になる場合があります。

薄暗く静かな場所で、周囲の環境刺激を減らしながら過ごすことで、めまいが落ち着きやすくなります。症状が強いときは、目を閉じて休むのも一つの方法です。

改善してきたら積極的に動く

めまいの発作時は安静にするべきですが、2〜3日程度で発作が収まったら、むしろ積極的に動いたほうが良いと言われています。
前庭リハビリテーションと呼ばれる考え方で、フラフラ感が続く場合があっても動くことで改善が早まると考えられています。

めまいの強さにもよりますので、主治医と相談しながら徐々に日常生活に復帰してください。

めまいの予防法

めまいは突然起こるケースもありますが、日常生活の過ごし方を見直すことで、発作の頻度や症状を軽減できる場合もあります。特に内耳の血流や自律神経のバランスは、めまいと深く関係しているため、日頃からの体調管理が大切です。

十分な睡眠をとる

睡眠不足や不規則な生活は、自律神経の乱れを引き起こし、めまいのきっかけとなる場合があります。就寝時間と起床時間をできるだけ一定にして十分な睡眠時間を確保し、疲労をため込まないことが重要です。

有酸素運動をする

適度な有酸素運動は全身の血液循環を良くし、内耳への血流を改善する効果が期待できます。ウォーキングや軽いランニング、水泳などを、無理のない範囲で習慣化することがおすすめです。

ストレスを解消する

ストレスは自律神経のバランスを崩し、めまいや耳鳴りを引き起こす要因です。趣味に没頭したり、ゆっくり入浴したりするなど、自分に合ったリフレッシュ方法でストレスをため込まない工夫をしましょう。

喫煙や飲酒を控える

喫煙は血管を収縮させ、内耳や脳への血流を悪化させる原因になります。めまいを予防するためにも、禁煙を徹底することが望ましいです。

また、過度な飲酒も血流や自律神経に影響を与えるため、量や頻度を控えめにすることが大切です。

まとめ:めまいと難聴から考える耳と体の健康

めまいと難聴は、音を聞く働きとバランスを保つ働きを担う内耳が深く関係しているため、同時に起こることがあります。突発性難聴やメニエール病、聴神経腫瘍、脳血管疾患など、背景にある病気によって対処法や緊急性は大きく異なります。

特に、神経症状を伴うめまいや、突然の聞こえの低下がある場合は、早急な受診が重要です。日頃から生活習慣を整え、異変を感じた際には早めに医療機関へ相談することが、耳と体の健康を守る第一歩となります。

執筆

聞こえと暮らし研究所 編集部

聞こえや難聴に関する正しい理解を広めるとともに、補聴器をはじめとする聴覚ケアの最新情報や、快適な聞こえを支える工夫を発信しています。日々の暮らしに寄り添う情報提供を通じて、聞こえに悩む方々の生活の質(QOL)向上に貢献していきます。

監修

小島 敬史

現国立病院機構栃木医療センター耳鼻咽喉科医長。
全例で補聴器適合検査を行い、補聴器の処方についても自ら特性図・適合検査結果を確認、調整の指示を行っている。

【略歴】
2006年、慶應義塾大学医学部卒。臨床研修修了後、2008年より同大学耳鼻咽喉科学教室へ所属。日本耳鼻咽喉科学会専門医、指導医取得。耳科、聴覚を専門とし、臨床研究や基礎研究に従事する。2018年から2020年、米国ノースウェスタン大学耳鼻咽喉科頭頸部外科でポストドクトラルフェローとして先天性難聴の蛋白機能解析に関する基礎研究に従事。2013年慶応義塾大学病院耳鼻咽喉科で難聴・耳鳴外来を担当。宇都宮方式での補聴器処方を学ぶ。

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