「補聴器相談医」という言葉を聞いて「普通の耳鼻科の先生と何が違うの?」と疑問に感じたことはありませんか?
補聴器は選び方や調整の仕方によって、聞こえやすさや使い心地が大きく変わるため、専門的な知識をもとにしたサポートが必要になります。そのため、補聴器相談医のような専門医に相談して、自分に合った補聴器選びや適切な調整を受けることが大切です。
この記事では、補聴器相談医の役割やメリット、受診の流れなどについてわかりやすくご紹介します。補聴器相談医について知りたい方や、受診を検討している方は、ぜひこの記事を読んで理解を深めてください。
補聴器相談医とは?

補聴器相談医とは、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が認定した、補聴器に関する専門知識と技術を持つ耳鼻咽喉科医です。難聴のある方が自分に合った補聴器を適切に使用できるように、医学的な視点からサポートする役割を担っています。
補聴器は単に購入すればよいものではなく、聴力や生活環境に合わせた調整が必要です。そのため、専門的な知識を持つ医師の関与が重要になります。補聴器相談医は、補聴器の選定から調整、購入後のフォローまでを、専門の補聴器販売店と連携しながら支援します。診療自体は一般的な耳鼻咽喉科で行われている点も特徴です。
補聴器相談医の役割
補聴器相談医は、難聴の患者さん一人ひとりの状態に合わせて、適切な補聴器を選択できるようサポートする役割を担っています。聞こえにくさの感じ方や生活環境は人によって異なるため、一様な対応ではなく個別に判断することが重要です。
まず、聞こえにくさを訴える患者さんに対して耳の状態を診察し、聴力検査などを行って難聴の種類や程度を正確に診断します。そのうえで、薬や手術などで改善が見込める場合には治療を優先し、治療が難しい場合に補聴器の必要性を判断します。
補聴器が必要と判断された場合、補聴器相談医は、患者さんの生活スタイルや予算、使用目的なども踏まえながら、適切な機種選びをサポートします。その後は専門の補聴器販売店と連携し、実際の装用や細かな調整を行いながら、より聞こえやすい状態を目指します。
さらに、補聴器は使い始めてからの調整が非常に重要です。そのため、補聴器相談医は定期的に聴力の変化を確認し、必要に応じて調整内容の見直しを行うこともあります。正しい使い方やメンテナンス方法についての指導も行い、長く安心して使用できるようサポートします。
耳鼻咽喉科医との違い
補聴器相談医も耳鼻咽喉科医の一種ですが、一般的な耳鼻咽喉科医と比べて補聴器に関する専門知識を豊富に持っている点が大きな特徴です。通常の耳鼻咽喉科医は耳や鼻、喉の病気全般を診療しますが、補聴器相談医はその中でも特に難聴と補聴器に関する分野に精通しています。
補聴器相談医は、日本耳鼻咽喉科学会専門医を取得した医師が、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が定める講習や実習を修了し、一定の基準を満たした場合に認定されます。そのため、耳の病気の診断、治療で改善する可能性のある難聴かどうか、補聴器が必要な難聴かどうかを判断することに長けています。
補聴器の使用の前には、医学的な診断が不可欠です。一般の耳鼻咽喉科医に相談するだけでなく、必要に応じて補聴器相談医のサポートを受けることで、より適切な対応が可能になります。

補聴器適合判定医との違い
一方で「補聴器適合判定医」という資格を持つ医師も存在します。これは、補聴器適合判定に関する医師研修会を修了した医師を指します。
補聴器適合判定検査とは、特定の施設基準を満たした耳鼻咽喉科において、補聴器を装用した患者さんに対して検査を行い、その効果や適合状態を評価するものです。具体的には、難聴の診断から、その方の耳にあった補聴器の選定、補聴器装用後の聞こえの改善効果や調整状態、適切に使用できているかどうかなどを客観的に確認します。
つまり役割としては、補聴器相談医が補聴器導入前の判断をまず行うのに対し、補聴器適合判定医は機種選び、装用後の効果測定や適合状態の評価、導入後の管理や指導まで幅広く関わります。
このように両者は役割が異なっているようにも見えますが、実際は補聴器適合判定医の多くは補聴器相談医を取得しています。補聴器の導入から使用後のフォローまでを適切に行うためには、まずは補聴器相談医を受診、補聴器自体の調整については補聴器適合判定医の元で調整するなど、専門医の役割を理解し、必要に応じて相談することが大切です。
補聴器相談医に相談するタイミング

日常生活の中で聞き取りにくさを感じる場面が増えてきた場合は、早めに補聴器相談医へ相談することが大切です。特に加齢による聴力の低下はゆっくり進むことも多く、自分では気づきにくい場合もあります。
次のような症状がある場合は受診を検討しましょう。
- 日常生活で聞き取りにくさが目立ってきた
- 耳鳴りが続いている
- 周りの人から聴力の低下を指摘された
- 聞こえの悪さによって日常生活に支障が出ている
- ある日突然耳が聞こえにくくなった
これらの症状がある場合は放置せず、早めに相談することで適切な対処や治療につながります。特に急な聞こえの低下は緊急性が高いため、速やかに受診することが重要です。
補聴器相談医に相談するメリット

補聴器相談医に難聴などの症状を相談するメリットは、主に以下の5つです。
- 専門的な補聴器のアドバイス・指示がもらえる
- 適正な検査による診断を受けられる
- 補聴器の購入費用で医療費控除が受けられる
- 地方自治体の補聴器助成事業による補助を受けられる場合がある
- 提携している補聴器販売店を紹介してもらえる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
専門的な補聴器のアドバイス・指示がもらえる
補聴器相談医に相談する大きなメリットは、専門的な視点から補聴器のアドバイスや指示を受けられる点です。検査結果をもとに、一人ひとりの聴力や生活環境に合わせた適切な補聴器の選び方を提案してもらえます。
補聴器は種類や性能が多く、自分だけで選ぶのは難しいものです。適切でない補聴器を選ぶと、十分な効果が得られないだけでなく、使いづらさを感じてしまうこともあります。補聴器相談医のサポートを受けることで、こうした失敗を防ぎ、自分に合った補聴器を選びやすくなります。
また、装用後の調整や使い方の指導も受けられるため、補聴器の効果を最大限に引き出すことができます。単に機器を選ぶだけでなく、継続して快適に使うためのサポートが受けられる点も大きなメリットです。

適正な検査による診断を受けられる
補聴器相談医に相談することで、専門的な検査による正確な診断を受けられます。一般的な健康診断の簡易的な聴力チェックとは異なり、耳鼻咽喉科では「標準純音聴力検査※1」や「標準語音聴力検査※2」など、より詳しい検査が行われます。
これにより、難聴の種類や程度を正確に把握でき、補聴器が必要かどうかを医学的に判断してもらえます。
※1……標準純音聴力検査:さまざまな高さや大きさの音を聞いて、どの程度の音まで聞こえるか詳しく調べる検査。
※2……標準語音聴力検査:実際の言葉を聞き取り、どの程度正確に理解できるか調べ、日常会話の聞き取り能力を確かめる検査。
なお、健康診断の聴力検査については以下の記事で詳しく解説していますので、違いが気になる方はぜひご覧ください。
補聴器の購入費用で医療費控除が受けられる
補聴器相談医に相談し、補聴器の装用が必要と判断された場合には「補聴器適合に関する診療情報提供書」を発行してもらうことができます。この書類は、補聴器が医療上必要であることを証明するものです。
この提供書をもとに補聴器を購入すると、その費用が医療費控除の対象となる場合があります。補聴器は高額になることも多いため、経済的な負担を軽減できる点は大きなメリットです。
補聴器購入の医療費控除など、公的支援制度については以下の記事で詳しく解説していますので、そちらも併せてご覧ください。
地方自治体の補聴器助成事業による補助を受けられる場合がある
難聴と認知症との関係が明らかになってきたことを背景に、地方自治体によっては補聴器の購入費用に対して独自の助成制度を設けているところがあります。多くの自治体では、助成を受ける際の要件として補聴器相談医による診断を必要としており、この点でも補聴器相談医を受診するメリットは大きいです。
補聴器助成事業を行っているかどうかや、対象となる条件、助成金額は自治体ごとに異なるため、詳細についてはお住まいの自治体に直接お問い合わせください。

提携している補聴器販売店を紹介してもらえる
補聴器相談医は、専門の補聴器販売店と連携していることが多く、患者さんに合った信頼できる販売店を紹介してもらえるのもメリットです。
「補聴器適合に関する診療情報提供書」は、補聴器の専門家への紹介状としての役割もあり、医師と販売店が連携しながら調整やフォローを行う体制が整っています。これにより、補聴器の選定から装用後の調整までスムーズに進めることが可能です。
初めて補聴器を検討する方でも、専門家のサポートを受けながら進められるため、不安を軽減しながら自分に合った補聴器を見つけやすくなります。
補聴器相談医を受診した際の流れ

次に、補聴器相談医を受診した際の一般的な流れについて、わかりやすく解説します。
耳の状態の診察
まず耳鼻咽喉科で耳の状態を詳しく診察し、聴力検査や聞き取りの検査などを行って、難聴の種類や程度を正確に診断します。これにより、聞こえにくさの原因がどこにあるのか明確に把握します。
その結果をもとに、補聴器の必要性や適応について補聴器相談医が判断します。補聴器が必要と判断された場合は「補聴器適合に関する診療情報提供書」が作成されます。
補聴器販売店で補聴器を購入
次に、連携している補聴器販売店で具体的な機種選びを行います。補聴器販売店では、補聴器の専門資格を持つ認定補聴器技能者がカウンセリングを行い、聴力の状態や生活環境、使用目的などを踏まえて最適な補聴器を提案します。
その後、医師による検査結果や聴力データをもとに補聴器の細かな調整を行い、実際の聞こえ方を確認しながらフィッティングを進めていきます。一人ひとりの聞こえ方に合わせて調整することで、より自然で快適な聞こえを目指します。

補聴器の装用指導
補聴器は購入して終わりではなく、継続的な調整と慣れが重要です。実際に日常生活で使用する中で、聞こえにくさや音の違和感を感じた場合は、補聴器販売店などで再度調整を行います。
また、正しい装着方法や取り扱い、メンテナンス方法などについての指導も受けることができるため、安心して使用を続けられる点もメリットです。購入後もトレーニングやアドバイスを受けながら徐々に補聴器に慣れていくことで、自分にとって最適な聞こえ方に近づけられます。
補聴器相談医の受診費用

補聴器相談医を受診した場合の費用は、基本的に通常の耳鼻咽喉科の診察と大きく変わりません。診察や聴力検査のみであれば健康保険が適用されるため、3割負担の場合の自己負担は、およそ1,500円〜2,500円程度が目安です。
一方で、補聴器の適合状態を詳しく確認する「補聴器適合検査」を行った場合は、3割負担で約3,900円程度かかり、これに診察料や処置料が加わります。2回目の検査では、約2,100円程度が目安となります。検査内容によって費用が変わる点は押さえておきましょう。
また、これらの受診費用は医療費控除の対象です。さらに、補聴器が必要と判断されたうえで「補聴器適合に関する診療情報提供書」を発行してもらうと、補聴器の購入費用も医療費控除の対象になります。
補聴器相談医のいる病院の探し方

補聴器相談医が在籍している医療機関を探すには、まず近くの耳鼻咽喉科や総合病院に問い合わせて、補聴器相談医が在籍しているかを確認してみましょう。
また、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の公式ホームページでは、都道府県ごとに補聴器相談医を検索できる一覧が公開されています。地域ごとに医師を調べられるため、自宅から通いやすい医療機関を見つける際に役立ちます。
通院のしやすさやサポート体制も考慮しながら、自分に合った医療機関を選ぶことが大切です。
【関連サイト】
補聴器相談医名簿|日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
まとめ:聞こえに不安を感じたら補聴器相談医へ相談を

補聴器相談医は、難聴の診断から補聴器の選定、装用後のフォローまでを一貫してサポートする専門の耳鼻咽喉科医です。耳の状態を正確に診断したうえで、本当に補聴器が必要かどうかを判断し、一人ひとりの生活環境や聞こえの状態に合った適切な補聴器選びを支援してくれます。
また、補聴器相談医に相談することで、専門的なアドバイスを受けながら補聴器を選べるだけでなく、医療費控除の対象になるなど、費用面でのメリットもあります。さらに、提携している補聴器販売店と連携して調整やフォローを受けられるため、安心して使用を続けられる点も大きな特徴です。
聞こえにくさは放置すると日常生活の質の低下につながる可能性があります。少しでも違和感を覚えた場合は早めに受診し、適切な診断と対応を受けることが重要です。補聴器相談医を上手に活用することで、自分に合った聞こえを取り戻し、快適な生活を送る第一歩につながります。
執筆
聞こえと暮らし研究所 編集部
聞こえや難聴に関する正しい理解を広めるとともに、補聴器をはじめとする聴覚ケアの最新情報や、快適な聞こえを支える工夫を発信しています。日々の暮らしに寄り添う情報提供を通じて、聞こえに悩む方々の生活の質(QOL)向上に貢献していきます。
監修
小島 敬史
現国立病院機構栃木医療センター耳鼻咽喉科医長。
全例で補聴器適合検査を行い、補聴器の処方についても自ら特性図・適合検査結果を確認、調整の指示を行っている。
【略歴】
2006年、慶應義塾大学医学部卒。臨床研修修了後、2008年より同大学耳鼻咽喉科学教室へ所属。日本耳鼻咽喉科学会専門医、指導医取得。耳科、聴覚を専門とし、臨床研究や基礎研究に従事する。2018年から2020年、米国ノースウェスタン大学耳鼻咽喉科頭頸部外科でポストドクトラルフェローとして先天性難聴の蛋白機能解析に関する基礎研究に従事。2013年慶應義塾大学病院耳鼻咽喉科で難聴・耳鳴外来を担当。宇都宮方式での補聴器処方を学ぶ。