「人の声を聞くとオレンジ色が見える」「音楽を聴くと、カラフルな色が頭に浮かぶ」など、音に対して色を感じる現象。
こうした感覚は「色聴」または「音色共感覚(おといろきょうかんかく)」と呼ばれる共感覚の一種です。幼い頃から当たり前に感じている場合、「誰にでもある感覚だと思っていた」という人もいます。
本記事では、色聴の特徴や感じ方、色聴の傾向を確認する方法について解説します。医療機関への相談を検討したほうがよいケースも紹介するので、自分や身近な方の特徴的な感覚について気になっている方は参考にしてください。
音が色に見える「色聴」とは

色聴とは共感覚の一種で、音を聞いたときに色の感覚が自動的に生じる現象です。
たとえば、特定の人の声を聞くとオレンジ色を感じたり、ピアノの音を聞くと青色が見えたりすることがあります。感じる色が実際の視界に重なって現れるように感じる人もいれば、頭の中に色のイメージが浮かぶように感じる人もいます。
色聴の割合・どれくらいの人にある?
また、共感覚全体については人口の少なくとも約4%にみられると推計され、色聴の割合は0.2〜1.3%などの推定値が報告されています※。ただし、対象者や判定基準によって結果が異なり、色聴の保有率を調べた研究自体も少ないため、正確な割合は十分に分かっていません。
※ Synesthesia: an introduction
「共感覚」の一種
共感覚とは、一つの刺激をきっかけに、本来とは別の感覚や知覚が自動的に生じる現象で、色聴以外にもさまざまな種類があります。
| 共感覚の種類 | 感じ方の例 |
| 色聴 | 音を聞くと色を感じる |
| 色字共感覚 | 文字や数字に特定の色を感じる |
| 空間配列型共感覚 (数型共感覚など) |
数字や曜日、月などが 特定の位置や並びで感じられる |
| ミラータッチ共感覚 | 他人が触られているのを見ると、 自分も触られたように感じる |
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共感覚には少なくとも60種類が確認されており、一部の専門家によっては150種類以上あると推定されています。
色聴は病気ではなく脳の特性
物心のついた幼少期からみられる共感覚は、「発達性共感覚」と呼ばれ、病気や精神疾患ではなく、感覚情報を処理する脳の働きの違いだと研究されています※1。
色字共感覚を対象とした一部の研究では、共感覚を持つ人と持たない人で脳の構造的なつながりに違いがみられたと報告されました※2。ただし、なぜ共感覚が生じるのか、その詳しい仕組みはまだ完全には分かっていません。
※1 Synesthesia – Cleveland Clinic
※2 Increased structural connectivity in grapheme-color synesthesia
色聴の原因:なぜ音に色を感じるのか

色聴が起こる原因は完全には解明されていませんが、脳の構造や情報処理、遺伝、学習・経験など、複数の要因との関連が研究されています。
・脳の情報処理の特徴
色聴のある人の脳画像を用いた研究では、音を聞いたときに、聴覚に関わる脳の領域だけでなく色知覚に関わる脳の領域も活動したことが報告されています。
・遺伝的な要因
同じ家族のなかで複数人にみられるケースがあり、遺伝との関連も研究されています。※
※ Rare variants in axonogenesis genes connect three families with sound-color synesthesia
・学習や経験
共感覚全般では、幼少期の学習や経験が刺激と色の結びつきに影響する可能性も研究されています。とくに文字や数字と色を結びつける色字共感覚では、幼少期の経験との関連が報告されています。
色聴は「生まれつき」「学習の影響」と一つの原因だけで説明することは難しく、その仕組みについて現在も研究が続けられています。
色聴の特徴

色聴の感じ方には個人差があります。ここでは、主にみられる特徴を紹介します。
色聴は後天的に起こる?
色聴は幼い頃から感じていても、「周りの人は感じていない感覚」だと気づいていないケースがあります。
たとえば、子どもの頃から音に色を感じていると、「みんなも同じように感じている」と思うこともあるでしょう。そのため、後になって色聴という言葉を知り、自分の感覚が一般的ではないと気づく人もいます。
ここで区別したいのが、「大人になって今までの現象が色聴だと気づいた」ことと、「大人になって突然、色を感じ始めた」ことです。まれではありますが、子ども時代を過ぎてから新たに共感覚が生じた場合には、病気や薬物など別の原因が関係する可能性もあります。
色聴の感じ方は人それぞれ
色聴を持つ方でも、どの音に、どのような色を感じるのかは人によって異なります。色を感じるきっかけには、次のようなものがあります。
- 人の声に色を感じる
- 音色に色を感じる
- 音の高さによって色が変化する
- 曲調や調性によって色を感じる
- 音楽全体に色や色彩の変化を感じる
たとえば、人の声に色を感じる場合でも、「特定の人の声に特定の色を感じる」と感じる人もいれば、声の高さや強さによって変わる人もいます。音楽の場合も、音楽全体から色を感じたり、曲の変化に伴って色が変化したりと、感じ方はさまざまです。

同じ音には似た色を感じやすい
同じ人のなかでは、音と色の組み合わせが比較的安定しやすい特徴もあります。
たとえば、特定のピアノの音を青く感じる人が、翌日には赤、翌週には黄色というように、その都度まったく異なる色を感じるのではありません。また、同じ音を聞いても、Aさんは「青」、Bさんは「黄色」と感じることがあります。
つまり、人によって感じる色は違っても、一人ひとりのなかでは一定の傾向があるということです。
色を自分でコントロールすることはできない
色聴では、音に伴う色の感覚は自分の意思で作り出すのではなく、自動的に生じるとされています。
「今日はこの音を青にしよう」と考えて色を作っているわけではありません。音をきっかけとして、自動的に色の感覚が生じます。
色聴を含む共感覚があっても、多くの場合は日常生活に大きな問題を生じません。ただし、音の多い場所で刺激を強く感じたり、集中しにくかったりする人もいます。
色聴かもと思ったら?思い込みとの違いを確認する方法

「自分が感じているものは色聴なのだろうか」と疑問に思った場合は、まず共感覚にみられる特徴と照らし合わせてみましょう。
色聴の特徴をチェックする
色聴の主な特徴を挙げてみました。

- 音を聞くと、意識しなくても自然に色を感じる
- 感じる色を自分の意思で変えることはできない
- 同じ音に対して、時間が経っても同じ色を感じる
- 子どもの頃から音に色を感じていた
- 人の声や楽器、音楽など特定の音に色を感じる
- 音の高さ・音色・曲調などによって感じる色が変化する
- 色が実際に見える、または頭の中に色のイメージが浮かぶ
- 音と色の組み合わせに快・不快などの感情を伴うことがある
当てはまる項目が多くても、このチェックだけで色聴と診断できるわけではありません。
そもそも「このチェックで○個以上当てはまれば色聴」と判断できる医学的な基準はないため、自分の感覚を整理するための参考として活用しましょう。
色聴かもと感じたら、普段どのような音に何色を感じるのか、簡単にメモしておくのもおすすめです。数日から数週間あけて同じ音を聞き、感じる色に一貫性があるかを振り返ると、自分の感覚を整理しやすくなります。
医療機関を受診する
色聴には、一般的な病気のように「この検査をすれば診断できる」という確立された医学的な診断方法はありません。幼少期からみられる発達性共感覚で、生活上の支障がなければ、通常は治療を必要としないからです。
共感覚については、研究者が開発した判定ツールがあり、オンラインで利用できるものもあります。病気の有無を判断する医学的な検査ではないため、自分が感じる音と色の関係を知るための参考として利用しましょう。
音とともに感じる色が刺激となり、日常生活に影響が出ている場合は医療機関への相談を検討してください。聞こえ方など耳の症状を伴う場合は耳鼻咽喉科、突然現れた場合や神経症状を伴う場合は神経内科、不安やストレスなどが大きい場合は心療内科・精神科などになります。
医療機関では「色聴かどうかを診断してもらう」というより、生活上の困りごとについて相談したり、ほかに原因となる病気が隠れていないかを確認したりすることが主です。

こんな場合は早めに医療機関へ相談を
これまでなかった色の感覚が突然現れた場合は、自己判断せず医療機関へ相談しましょう。後天的な共感覚は、脳の損傷や病気などをきっかけに生じるケースが報告されています。
特に、次のような変化がある場合は注意が必要です。
- これまでなかった色や光の感覚が突然現れた
- 見え方や聞こえ方が急に変化した
- 強い頭痛やめまいなど、ほかの症状を伴う※1
- 意識がぼんやりする、けいれんが起こる※2
- 頭部外傷後に症状が現れた※3
- 日常生活や仕事に大きな支障が出ている
色聴に似た感覚でも、別の原因によって生じている可能性があります。特に突然の変化やほかの症状を伴う場合は、早めに医療機関へ相談してください。
※1 Headaches
※2 Symptoms of a retinal migraine
※3 Head injury and concussion
色聴とうまく付き合うためのヒント

色聴そのものに治療が必要とは限りません。ただし、音に伴って生じる色の感覚を負担に感じる場合は、生活環境を工夫する方法があります。
負担を感じているときは、次のような工夫を試してみましょう。
音の刺激を減らせる環境を作る
周囲の音によって疲れやストレスを感じる場合は、静かな場所で休憩するなど、音の刺激から離れる時間を作ってみましょう。
色聴は、音をきっかけに自動的に色を感じる共感覚の一種で、自分の意思で自由にコントロールできるものではありません。音による刺激を負担に感じる場合は、ノイズキャンセリング機能のあるヘッドホンなどを活用するのも一つの方法です。
自閉スペクトラム症で聴覚過敏のある子どもを対象とした研究では、遮音機能のあるヘッドホンを使用したところ、ストレス反応の指標となる皮膚の電気活動が低下したことが報告されました。
ただし、この研究は色聴を対象としたものではなく、色聴への効果は明らかになっていません※。音そのものを負担に感じる場合の選択肢の一つとして、自分に合うか確認しながら活用するとよいでしょう。
身近な人に色聴について伝えてみる
色聴は本人にしか分からない主観的な感覚で、他者に伝えることが難しい場合があります。
必要に応じて、家族や職場の人など身近な人に、自分がどのような場面で負担を感じるのかを具体的に伝えることも大切です。
もし、自分が「周囲の音が多いと、色の刺激も増えて疲れやすい」「静かな場所で少し休むと楽になる」と感じている場合は、そのことを具体的に伝えてみましょう。

困りごとが大きい場合は専門家へ相談する
色聴による負担感や集中しにくさなどが生活に影響している場合は、医療機関などで現在困っていることについて相談しましょう。
色聴を含む共感覚そのものは、治療を必要とするものではありません。ただし、共感覚による感覚が強い場合には、日常の集中力に影響することもあると報告されています。
そのため、色聴そのものを「治す」ことを目的にするのではなく、生活上どのような場面で困っているのかを相談し、負担を減らす方法を考える視点が大切です。
まとめ:色聴とともに、自分らしい毎日を

色聴とは、音を聞いたときに色の感覚が自動的に生じる共感覚の一種です。
幼少期からみられる発達性の色聴は、それ自体が病気というわけではありません。感じる色には個人差がありますが、同じ人のなかでは、音と色の組み合わせが比較的一貫していることが特徴のひとつです。
共感覚は本人にとって自然な感覚であるため、幼い頃からあっても、後になって初めて自分の感覚が一般的ではないと気づくことがあります。ほかの症状を伴う場合や、共感覚による感覚が生活に大きく影響している場合は、自己判断せず医療機関へ相談しましょう。
監修
小島 敬史
立川駅前おといろ耳鼻咽喉科 院長。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定 補聴器相談医。補聴器適合判定医師研修会 修了。
全例で補聴器適合検査を行い、補聴器の処方についても自ら特性図・適合検査結果を確認、調整の指示を行っている。
【略歴】
2006年、慶應義塾大学医学部卒。臨床研修修了後、2008年より同大学耳鼻咽喉科学教室へ所属。日本耳鼻咽喉科学会専門医、指導医取得。耳科、聴覚を専門とし、臨床研究や基礎研究に従事する。2018年から2020年、米国ノースウェスタン大学耳鼻咽喉科頭頸部外科でポストドクトラルフェローとして先天性難聴の蛋白機能解析に関する基礎研究に従事。2013年慶應義塾大学病院耳鼻咽喉科で難聴・耳鳴外来を担当。宇都宮方式での補聴器処方を学ぶ。
江崎 優
聞こえと暮らし研究所 所長。認定補聴器技能者。
大手補聴器メーカーで長年、全国の販売店延べ数百店舗の技術指導・接客サポート・調整サポートに従事。現在はフジ医療器(補聴器事業部)に所属。メーカー・販売店の両視点を持つ「作る側と売る側、両方を知る専門家」。
その経験から、消費者が信頼できる情報源の必要性を感じ、当研究所を創設。全国での講演実績多数。
執筆
聞こえと暮らし研究所 編集部
聞こえや難聴に関する正しい理解を広めるとともに、補聴器をはじめとする聴覚ケアの最新情報や、快適な聞こえを支える工夫を発信しています。日々の暮らしに寄り添う情報提供を通じて、聞こえに悩む方々の生活の質(QOL)向上に貢献していきます。