聞こえの悩みは、医学的な診断と補聴器の調整がそろってこそ、改善への道筋が見えてきます。全4回連載の最終回では、補聴器相談医である「立川駅前おといろ耳鼻咽喉科」の小島敬史先生に、補聴器を使いこなすポイントや理想とする補聴器業界の在り方について伺いました。
聞こえに悩んだときの第一歩と補聴器を使いこなすコツ

――「最近、聞こえにくくなってきた」と感じている方や補聴器を検討している方は、まず何から始めれば良いですか?
まずは、補聴器相談医がいる耳鼻科で、正確な診断と聴力検査を受けることが大切です。自分の聞こえの程度や難聴のタイプを正しく知ることが、補聴器を考えるうえでの出発点になります。また、「最近聞こえにくくなってきた」と自覚できる方は、聞こえに対する意識が高い方が多いんです。聞こえたいからこそ気づくんですね。ご自身で気づいた方はもちろん、家族から指摘されたことがある方も、まずは気軽に補聴器相談医のいるクリニックに相談してみてください。
――補聴器をうまく使いこなすために大切なポイントを教えてください。
補聴器の合わせ方にはいくつかの考え方があり、代表的な方法の一つに「宇都宮方式聴覚リハビリテーション」があります。これは、脳が補聴器の音に慣れるには時間が必要だと考え、「約3ヶ月間」の常時装用と段階的な調整を行う方法です。
この方法を参考にすると、できれば3ヶ月間しっかり補聴器を貸し出してくれるお店で試すことが大切です。補聴器は調整を重ねて馴染ませていく必要があるため、防音室での検査ができるお店だとより良いですね。そして、補聴器は「聞きたいときだけつける」のではなく、毎日・長時間つけることもポイントです。目標は一日8時間。朝起きたらつけて、夜寝るときに外す。この基本を続けることで、補聴器は次第に自分のものになっていきます。
補聴器に精通する医師が目指す理想の治療とは

――耳鼻科医としての歩みの中で、補聴器に力を入れるようになった理由を教えてください。
はじめは、医師として多くの手術経験を積み、診断から治療まで一貫して関わりたいと考えていました。手術・研究といろいろなことに関わりましたが、その中でも手術や内容が専門的な耳・聞こえを専門分野にすることに決めました。
中でも聞こえの分野に力を入れるようになったのは、補聴器に本気で取り組む医師が極めて少ないと気づいたからです。補聴器診療を始めると、患者さんが喜んでくれる一方で、販売店との連携にはまだまだ工夫の余地があり、自分がその橋渡し役になりたいと感じたことも大きな理由です。
――先生が目指す「聞こえ」の診療とはどのようなものでしょうか?
やはり一番は、その人が“聞こえで困っていること”にしっかり向き合い、解決につなげていく診療です。聞こえの悩みは人それぞれで、難聴の程度だけでは説明できないこともあります。だからこそ、その人がどんな場面で困っているのかを丁寧に聞き取り、一緒に改善の方法を探していくことを大切にしています。
それと同時に、耳鼻科と補聴器販売店が、対等なパートナーとして協力し合える関係を築きたいですね。医師側が高い立場から指示を出すのではなく、お互いに相談しやすい関係のほうが、結果的に患者さんにとっても良いと感じています。
また、補聴器販売店の方は、販売を通じて事業を維持しているため、収益面との兼ね合いから判断に迷う場面もあると思います。だからこそ、耳鼻科医が専門的に関わることで判断がぶれず、患者さんにとってより良い選択につながると考えています。
耳鼻科と補聴器販売店が協力することで広がるサポート

――具体的にどのように補聴器販売店と連携していくのですか?
まずは、補聴器販売店から耳鼻科へつないでいただき、私が医学的な診断と正確な聴力検査を行います。そのうえで補聴器が適合となる方には、「ぜひお店で調整を続けてください」とお返しし、販売店の方に検査結果や調整のポイントなどもフィードバックします。さらに、先に耳鼻科を受診された方で補聴器が適合となる場合には、こちらから補聴器販売店を紹介する流れも整え、双方向で協力できる関係をつくりたいんです。こうした流れをつくることで、販売店の方の迷いが減り、患者さんも安心でき、補聴器診療全体のクオリティが上がると考えています。
――そうした連携がとれれば、患者さんも販売店の方も安心でしょうね。
そうですね。最終的には、同じ考えで取り組みたいと思う耳鼻科医が増え、補聴器販売店と協力し合える連携体制を築けたらいいなと思っています。こうしたネットワークがあれば、補聴器販売店では販売が認められていない「禁忌八項目」と呼ばれる、医学的な評価が必要なケースも耳鼻科につながりやすくなります。
聞こえに悩む人を誰ひとり取りこぼさない体制をつくり、補聴器がより身近で、安心して使えるものになればと願っています。聞こえで気になることがあれば、どうぞ遠慮なく補聴器相談医のいる耳鼻科にご相談くださいね。
監修
小島 敬史
立川駅前おといろ耳鼻咽喉科 院長
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定 補聴器相談医
補聴器適合判定医師研修会 修了
全例で補聴器適合検査を行い、補聴器の処方についても自ら特性図・適合検査結果を確認、調整の指示を行っている。
経歴
| 2006年3月 | 慶應義塾大学医学部医学科 卒業 |
| 2008年3月 | 佐野厚生総合病院 初期臨床研修修了 |
| 2008年4月 | 慶應義塾大学耳鼻咽喉科学教室所属 |
| 2013年9月 | 慶應義塾大学病院 助教として勤務 難聴/耳鳴外来と小児難聴外来を担当 |
| 2015年4月 | 町田市民病院 補聴器外来立ち上げ |
| 2018年8月 | 米国 ノースウェスタン大学耳鼻咽喉科で 遺伝性難聴の基礎研究に従事 |
| 2026年4月 | 立川駅前おといろ耳鼻咽喉科 開業 |
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