目次
4.支援制度④ 軽度・中等度難聴児補聴器購入費助成制度

身体障害者手帳の交付対象とならない軽度・中等度の難聴がある児童に対して、補聴器購入費用の一部を助成する制度があります。
軽度・中等度難聴児補聴器購入費助成制度の概要
軽度・中等度難聴児補聴器購入費助成制度を利用することで、補装具費支給制度の対象にならない子どもたちも、経済的な負担を軽減して補聴器を購入できます。助成額は自治体によって異なりますが、多くの場合、補聴器の購入費用の3分の2から全額が助成されます。
軽度・中等度難聴児補聴器購入費助成制度は、身体障害者手帳の交付対象とならない軽度・中等度の難聴児を対象とした、自治体が実施する助成制度です。
子どもの聴覚は、言語の習得やコミュニケーション能力の発達、学習活動において極めて重要な役割を果たします。たとえ軽度から中等度の難聴であっても、適切な時期に補聴器を装用することで、言語発達の遅れを防ぎ、健全な成長を支援することができます。
この制度は、身体障害者手帳の対象とならない比較的軽い難聴であっても、成長期の子どもに必要な支援を提供することを目的としています。多くの都道府県や市区町村で実施されており、全国的に広がりを見せています。
軽度・中等度難聴児補聴器購入費助成制度の窓口
軽度・中等度難聴児補聴器購入費助成制度を利用する際には、お住まいの都道府県および市区町村の障害保健福祉窓口で支給申請を行ないます。
軽度・中等度難聴児補聴器購入費助成制度の対象者
この制度の対象となるのは、以下の条件を満たす方です。
- 18歳未満(18歳に達する日以降、最初の3月31日まで)の児童
- 両耳の聴力レベルが概ね30デシベル以上70デシベル未満※7
- 身体障害者手帳(聴覚障害)の交付対象となる聴力ではない
- 補聴器の装用により、言語の習得や教育などにおいて一定の効果が期待できると医師が判断している
- 対象児童の属する世帯の所得が決められた額未満※8である
- 居住する都道府県や市区町村において、本制度が実施されている
※7……医師が必要と認める場合は30デシベル未満でも対象となる場合がある
※8……自治体によって基準額が異なる。所得制限がない自治体もある
軽度・中等度難聴児補聴器購入費助成制度の手続きの流れ

軽度・中等度難聴児補聴器購入費助成制度を利用する一般的な流れは以下の通りです。自治体によって手続きが異なるので、必ず事前に確認してください。
- お住まいの市区町村の障害保健福祉窓口に相談し、制度の詳細を確認。申請に必要な書類(申請書、医師の意見書用紙など)を受け取る
- 耳鼻咽喉科などを受診し、聴力検査を受けて難聴の診断を受ける
- 医師に補聴器が必要である旨を記載した「補聴器購入に関する意見書」を作成してもらう
- 補聴器販売店で補聴器の相談をし、見積書を作成してもらう
- 補聴器を購入する前に、申請書、医師の意見書、見積書などの必要書類を市区町村の障害保健福祉窓口に提出する
- 審査後、助成決定通知書が送付される
- 補聴器を購入し、領収書を受け取る
- 領収書などを市区町村の障害保健福祉窓口に提出し、助成金を受け取る
軽度・中等度難聴児補聴器購入費助成制度の手続きにあたっての注意点
軽度・中等度難聴児補聴器購入費助成制度の手続きを行う際の注意点は、以下の通りです。
●自治体によって制度自体が無い場合がある
すべての自治体で本制度が実施されているわけではありません。まずはお住まいの市区町村の障害保健福祉窓口に制度があるか確認しましょう。
●自治体によって手続きの流れが異なる
手続きの流れは、自治体によって異なります。「先に補聴器の購入代金を全額支払い、後から助成金を受け取る」「審査に通った時点で補聴器購入費助成券が発行され、購入時には差額分のみ支払う」など、さまざまな違いがあるので、まずはお住まいの市区町村の障害保健福祉窓口に確認しましょう。
●助成額や所得制限は自治体によって異なる
助成額の上限、自己負担割合、所得制限などは都道府県や市区町村ごとに設定されています。
●購入前の申請が必要
先に購入してしまうと助成を受けられない場合があります。必ず事前に確認しましょう。
●耐用年数の制限がある
補聴器の耐用年数(多くの場合5年)内は、原則として再度の助成を受けられません。
●修理費用も助成対象となる場合がある
自治体によっては、補聴器の修理費用も助成の対象としているところがあります。
自治体別、軽度・中等度難聴児補聴器購入費助成制度の事例
いくつかの自治体が行っている軽度・中等度難聴児補聴器購入費助成制度の概要をご紹介します。
●東京都「中等度難聴児発達支援補聴器購入費助成事業」
[対象者]
東京都内に居住する18歳未満で、両耳の聴力レベルが概ね30デシベル以上の児童
[助成内容]
基準額と補聴器購入費用を比較して少ない方の額の9/10を助成。生活保護世帯・低所得世帯の場合は全額を助成
基準額例:
- 高度難聴用耳かけ型:137,000円
- 重度難聴用耳かけ型:137,000円
- 耳あな型:137,000円
[詳細情報]
手続きを検討される方は、必ず自治体のWebサイトで詳細情報をご確認ください。
中等度難聴児発達支援事業|中等度難聴児発達支援事業|東京都福祉局
●神戸市「中等度難聴児発達支援補聴器購入費助成事業」
[対象者]
保護者が神戸市にお住まいの方で、次のすべてにあてはまる児童
- 18歳に達する日(お誕生日前日)以降、最初の3月31日までの方
- 両耳とも聴力が、30デシベル以上70デシベル未満の方(ただし、医師が補聴器の装用を必要と認めるときは、片方または両方の耳の聴力レベルが30デシベル未満についても対象となる場合がある)
- 補聴器の装用により、一定の効果が期待できると医師が判断する方
[助成内容]
基準額の2/3を助成
基準額例:
- 耳かけ型:40,000円
- 耳あな型(レディメイド):40,000円
- 耳あな型(オーダーメイド):100,000円
[詳細情報]
手続きを検討される方は、必ず自治体のWebサイトで詳細情報をご確認ください。
まとめ:自分に合った支援制度を活用しよう

補聴器購入に使える公的支援について、大きく4つご紹介しました。それぞれの制度には異なる対象者や条件があり、支給される金額や申請方法も異なります。
最も重要なのは、「自分がどの制度の対象となるか?」を正確に把握することです。まずは耳鼻咽喉科で聴力検査を受け、難聴の程度を確認しましょう。そのうえで、お住まいの市区町村の障害保健福祉窓口に相談することをオススメします。
補聴器は生活の質を大きく向上させる医療機器です。経済的な理由で購入をためらっている方も、公的支援を活用することで、負担を軽減できる可能性があります。豊かな聞こえを取り戻し、より快適な日常生活を送るために、ぜひ公的支援制度を積極的に活用してください。
執筆
聞こえと暮らし研究所 編集部
聞こえや難聴に関する正しい理解を広めるとともに、補聴器をはじめとする聴覚ケアの最新情報や、快適な聞こえを支える工夫を発信しています。日々の暮らしに寄り添う情報提供を通じて、聞こえに悩む方々の生活の質(QOL)向上に貢献していきます。
執筆協力
横井 孝治
介護アドバイザー。All About【介護】ガイド。
長期にわたる両親の介護を通して身につけた有益な介護情報を発信・共有するため、2006年に株式会社コミュニケーターを設立。2007年に介護家族や介護予備軍向けの情報サイト「親ケア.com」をオープン。800回を超える講演活動のほか、各種メディアにも数多く登場。YouTube「親ケア.com【公式】チャンネル」は、登録者数2.9万人以上。