[7]補聴器購入に使える公的支援制度

2.支援制度② 医療費控除

医療費控除の概要

医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得税や住民税の負担を軽減できる制度です。補聴器の購入費用も、一定の条件を満たせば医療費控除の対象となります。

医療費控除は、補聴器の購入費用だけでなく、その年にかかった家族全員の医療費の合計で計算できるため、他の医療費と合算することで控除の対象になる可能性があります。

医療費控除の窓口

医療費控除に関する申請や相談は、以下の窓口で行うことができます。

医療費控除についての主な申請&相談窓口

  • 税務署:お住まいの地域を管轄する税務署が申請窓口となる。国税庁のWebサイトで管轄税務署を検索可能。確定申告期間中は、特設の申告会場が設けられることもある。窓口での相談も可能だが、確定申告期間中は混雑するため、事前予約がオススメ
  • 国税庁ホームページ「確定申告書等作成コーナー」:インターネット環境があれば、自宅のパソコンやスマートフォンから確定申告書を作成し、e-Tax(電子申告)で提出することができる。24時間利用可能で、税務署に出向く必要がない
  • 税理士:確定申告に不慣れな方や、複雑な申告が必要な方は、税理士に相談・依頼することも可能(有料)。
  • 税務相談窓口:確定申告期間中は、市区町村の公民館や商工会議所などに臨時の税務相談窓口が設けられることがある。必要に応じて、お住まいの自治体のホームページや広報誌で確認を

確定申告で医療費控除の申請を行う際には、「補聴器適合に関する診療情報提供書」が必要となります。

医療費控除の対象者

年間の医療費が10万円(または総所得金額の5%のいずれか低い方)を超えた場合、確定申告を行うことで、超えた金額について所得控除を受けることができます。控除額の上限は200万円です。

そのほか、下記のような条件があります。

  • 補聴器相談医による診療や治療を受けている:単に「聞こえにくい」というだけでは対象にならない。耳鼻咽喉科など医療機関を受診し、難聴の診断を受けることが必要
  • 補聴器相談医が補聴器の使用を必要と認めている:補聴器相談医の「補聴器適合に関する診療情報提供書」などの証明書が必要
  • 医療機器として認証された補聴器を利用している:集音器※5は対象外となる
  • 確定申告を行う:会社員の方であっても、医療費控除を受けるには自分で確定申告を行う必要がある

※5……集音器:周囲の音を単純に大きくする機器。医療機器ではないため、医療費控除の対象にならない

医療費控除の手続きの流れ

医療費控除を受けるための流れは、以下の通りです。

  1. 耳鼻咽喉科などを受診し、聴力検査を受けて難聴の診断を受ける
  2. 補聴器相談医に補聴器が必要である旨を記載した「補聴器適合に関する診療情報提供書」を作成してもらう。一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が書式を公開※6している
  3. 診療情報提供書を持って補聴器を購入する。この際、領収書は必ず保管しておく
  4. その年にかかったほかの医療費(通院費、薬代、入院費など)の領収書も集めておく
  5. 翌年の2月16日から3月15日までの確定申告期間に、税務署に確定申告書を提出する。その際、医療費控除の明細書、診療情報提供書、補聴器購入の領収書などを添付する
  6. 申告内容が認められると、払いすぎた税金が還付される

※6……補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)

医療費控除の手続きにあたっての注意点

医療費控除の手続きを行う際の注意点は、以下の通りです。

●必ず補聴器相談医の証明書が必要となる

補聴器販売店で購入しただけでは、医療費控除の対象になりません。必ず事前に医療機関を受診し、補聴器相談医の診療情報提供書を取得してください。

●控除額は実際の減税額ではない

医療費控除は所得控除であり、控除額がそのまま戻ってくるわけではありません。実際の減税額は、控除額に税率をかけた金額になります。

●家族の医療費も合算できる

生計を一にする家族(配偶者、子ども、親など)の医療費も合算して申告できます。

●補装具費支給制度との併用はできない

障害者総合支援法に基づく補装具費支給制度で補聴器を購入した場合、自己負担分については医療費控除の対象になりません。

●領収書の保管が重要

確定申告時に領収書の提出は不要ですが、5年間の保管義務があります。