補聴器を購入しようと決めたとき、課題となるのが「どの販売店を選べばよいのか?」という問題です。補聴器の購入方法には「店舗」「通販」「訪問サービス」の3つがあり、当サイトでは、初めて補聴器を購入する方には「店舗」または「訪問サービス」をオススメしています。
しかし、補聴器専門店だけでも全国に数多くあり、また訪問サービスを提供する事業者もさまざまです。どの販売店を選ぶかによって、補聴器の効果や満足度、その後の快適な生活が大きく変わってきます。
本記事では、信頼できる補聴器販売店を選ぶ際の具体的なポイントを詳しく解説します。販売店選びで失敗しないために、ぜひ参考にしてください。
1.相談時の対応において、丁寧で親身になってくれるか

実際に販売店に相談してみたときの対応は、重要な判断基準となります。資格や設備が充実していても、スタッフの対応が不親切であれば、長く付き合っていくことは難しいでしょう。
確認すべきポイント
初めて販売店を訪れたとき(または訪問サービスを受けたとき)の対応をよく観察しましょう。以下のような点をチェックしてみてください。
- 丁寧に話を聞いてくれるか
- 専門用語を使わず、わかりやすく説明してくれるか
- 質問に対して的確に答えてくれるか
- 無理に購入を勧めてこないか
- 高額な機種ばかりを勧めてこないか
- デメリットやリスクについても説明してくれるか
優良な販売店では、まず「どのような場面で聞こえにくさを感じますか?」「どのような生活を送っていますか?」といった質問から始め、最初にあなたの状況を丁寧にヒアリングしてくれます。そのうえで、予算や希望に合わせて、いくつかの選択肢を提案してくれるはずです。
複数の販売店を比較する
可能であれば、複数の販売店に相談してみることをオススメします。それぞれの販売店の対応や提案内容を比較することで、より自分に合った販売店を見つけやすくなります。
「ほかの販売店でも相談してみたい」と伝えるのは、決して失礼なことではありません。むしろ、優良な販売店であれば、「ぜひ比較検討してください」と勧めてくれるはずです。強引に契約を迫ってくるような販売店は避けたほうが無難です。
2.資格取得者が在籍しているか

補聴器販売を行うだけなら特別な資格が必須ではありません。しかし、専門的な知識と技術を持った資格者が在籍しているかどうかは、販売店選びの重要な判断基準となります。
認定補聴器技能者とは
補聴器に関する代表的な資格が「認定補聴器技能者」です。これは公益財団法人テクノエイド協会が認定する資格で、補聴器に関する専門的な知識と技術を持った技能者であることを証明するものです。
認定補聴器技能者になるためには、補聴器販売の実務経験を積んだうえで、耳の仕組みや聴力、補聴器の種類や機能、フィッティング技術などについて学び、試験に合格する必要があります。さらに、資格取得後も定期的な講習を受けて、最新の知識と技術を更新しています。
資格者がいることのメリット
認定補聴器技能者が在籍している補聴器販売店では、カウンセリングをはじめ、聴力測定からフィッティング(調整)、アフターサポートまで、専門的で質の高いサービスを受けられます。また、難聴の程度や種類に応じて、適切な補聴器を提案してもらえます。
補聴器販売店を訪れる際には、「認定補聴器技能者は在籍していますか?」と尋ねてみましょう。優良な販売店では、Webサイトや店頭などに資格者の氏名や人数を掲示していることが多いものです。
ただし、資格がすべてではありません。資格を持っていなくても、豊富な経験と真摯な対応で質の高いサービスを提供しているスタッフもいます。資格の有無だけでなく、実際の対応や説明の丁寧さも合わせて判断することが大切です。
3.測定やフィッティングを丁寧に行ってくれるか

補聴器は単純に音を大きくする機械ではありません。医療機器として、一人ひとりの聴力に合わせた精密な調整が必要です。
聴力測定の重要性
信頼できる補聴器販売店では、必ず購入前に詳細な聴力測定を実施します。聴力測定では、どの周波数(音の高さ)の音が、どの程度聞こえにくいのかを正確に把握します。単に「聞こえにくい」というだけでなく、具体的なデータに基づいて補聴器を選定・調整することが、快適な聞こえを実現する第一歩なのです。
測定は防音室などの静かな環境で行われるのが理想的。高齢や持病があるなど、装用される方の体力や集中力に合わせ、適切に測定項目を変えられる販売店を選びたいところです。
また、測定の内容も重要です。目的が異なる測定があり、それぞれで調べる項目や測定方法が変わります。丁寧な販売店では、必要な項目を測定し、さまざまな角度から聴力を調べてくれます。
フィッティングの質を見極める
聴力測定の後には、測定結果に基づいて補聴器を調整するフィッティングが行われます。優良な補聴器販売店では、単にデータを入力するだけでなく、実際に装着した状態で細かく音を調整してくれます。
「普段、どのような場面で聞こえにくさを感じますか?」「テレビの音は聞こえますか?」「家族との会話で困ることはありますか?」といった、生活環境や困りごとを丁寧にヒアリングしてくれる販売店を選びましょう。
また、初回の調整だけでなく、購入後も定期的に聞こえ具合を確認し、必要に応じて再調整してくれる販売店がオススメです。補聴器は「買って終わり」ではなく、使いながら調整を重ねていくものだからです。
4.試聴サービスが充実しているか

補聴器は「電化製品」のように、購入してすぐに使えるものではありません。使う人の「聞こえの状態」「生活環境」「好み」「装用時の感覚」などに合わせる必要があります。そのため、購入前の試聴が重要です。
試聴サービスの内容を確認する
多くの補聴器販売店では、無料の「レンタル試聴サービス」を提供しています。期間は1週間から1カ月程度が一般的です。試聴期間中は、日常生活のさまざまな場面で補聴器を使用し、本当に自分に合っているかを確認できます。
レンタル試聴サービスを利用する際には、以下のような点を確認しましょう。
- 試聴期間はどのくらいか
- 複数の機種を試すことができるか
- 試聴中に調整のサポートを受けられるか
- 試聴後に断っても問題ないか
良心的な補聴器販売店では、試聴中に何度でも来店(または訪問)して、聞こえ具合の確認や、調整をしてもらえます。また、「やはり必要ない」と感じた場合に、気軽に断れる雰囲気があることも重要です。
【関連情報】
[5]補聴器を購入する前には、必ず試聴しよう!

5.購入後のアフターサポートが充実しているか

補聴器は購入して終わりというものではありません。むしろ、購入後のアフターサポートこそが、快適な聞こえを維持するために最も重要です。
定期的なメンテナンスとクリーニング
補聴器は毎日使用するものなので、耳垢や汗、湿気などで汚れたり、不具合が生じたりすることがあります。そのため、定期的なクリーニングとメンテナンスが必要です。
優良な補聴器販売店では、購入後も無料で定期点検やクリーニングを行ってくれます。頻度は3カ月から6カ月に1回程度が一般的です。自分では気づかない細かな汚れや不具合を、専門スタッフがチェックしてくれるため、補聴器を長く良い状態で使い続けることができます。
聴力の変化に応じた再調整
聴力は年齢とともに変化することがあります。また、補聴器に慣れてくると、音の感じ方が変わることもあります。そのため、定期的に聴力を測定し、必要に応じて補聴器を再調整することが大切です。
優良な補聴器販売店では、購入後も定期的に聴力測定を行い、聞こえ具合を確認してくれます。「最近、聞こえにくくなった気がする」「音が大きすぎる」といった相談にも、丁寧に対応してもらうことができます。
相談のしやすさ
購入後に困ったことや疑問が生じたとき、気軽に相談できる雰囲気があるかどうかも重要です。「こんなことで相談してもいいのかな」と遠慮してしまうような補聴器販売店では、小さな不満が積み重なり、結局使わなくなってしまうこともあります。
優良な販売店では、どんな小さな相談にも親身に対応してくれます。電話での相談、メールでの相談、突然の来店や訪問依頼にも柔軟に対応してくれる販売店を選びましょう。
6.通いやすい立地か、または自宅まで来てくれるか

購入後も定期的なメンテナンスや調整が必要となる補聴器。補聴器販売店を選ぶうえで、継続的に通える場所にあるか、または自宅まで来てくれる訪問サービスがあるかは、重要なポイントとなります。
店舗の場合は「アクセスの良さ」を確認
店舗で購入する場合は、自宅や職場から通いやすい場所にあるかを確認しましょう。公共交通機関を利用する場合は、駅から近いか、バス停から近いかもチェックポイントです。
また、車で通う場合は、駐車場があるか、駐車料金はどうなっているかも確認しておきましょう。足腰に不安がある方は、店舗がバリアフリーになっているか、エレベーターがあるかなども重要です。
さらに、営業時間や定休日も確認しておきましょう。仕事をしている方は、土日や夕方以降も営業しているかどうかがポイントになります。
訪問サービスの場合は「対応エリアとスケジュール」を確認
訪問サービスを利用する場合は、自宅が対応エリアに含まれているかを確認しましょう。また、訪問可能な曜日や時間帯、予約の取りやすさも重要です。
訪問サービスの大きなメリットは、移動に伴う負担がないことです。特に外出が困難な方、公共交通機関の利用が難しい方、足腰に不安がある方にとっては、自宅で専門的なサービスを受けられることは大きな安心につながります。
また、自宅という慣れた環境で、家族と一緒に相談できることもメリットです。実際の生活音(テレビの音、家族との会話など)を確認しながら調整してもらえるため、より実用的なフィッティングが可能になります。
7.医療機関と連携しているか

医療機器である補聴器が必要となる背景には「難聴」という医学的な問題があります。そのため、医療機関と連携している販売店を選ぶことで、より安心して補聴器を利用できます。
耳鼻咽喉科受診の重要性
難聴の原因はさまざまです。加齢によるもの(加齢性難聴)が最も多いのですが、なかには治療可能な難聴や、補聴器では対応できない難聴もあります。例えば、突発性難聴や中耳炎による難聴は、適切な治療によって改善する可能性があります。
そのため、補聴器を購入する前に、まず耳鼻咽喉科を受診して、難聴の原因を確認することが重要です。優良な補聴器販売店では、初めて補聴器を検討する方には、「まず耳鼻咽喉科を受診してください」とアドバイスしてくれることもあります。
また、補聴器を使用し始めた後も、定期的に耳鼻咽喉科で聴力検査を受けることが望ましいです。聴力の変化に合わせて、補聴器の調整や買い替えが必要になることもあるからです。
耳鼻咽喉科と補聴器販売店が連携するメリット
医療機関と連携している補聴器販売店では、必要に応じて耳鼻咽喉科を紹介してもらえたり、医師の診断書に基づいて補聴器の選定・フィッティングを行ってもらうことが可能です。
また、補聴器の購入費用について、医療費控除を受ける場合には、補聴器相談医※1による診療情報提供書が必要になります。連携している販売店であれば、こうした手続きについても適切なアドバイスをもらえるでしょう。
販売店を選ぶ際には、「医療機関との連携はありますか?」「必要な場合、耳鼻咽喉科を紹介してもらえますか?」と確認してみましょう。
※1……補聴器相談医:日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が認定する耳鼻咽喉科医で、聞こえづらい方々のそれぞれの障害に対応して、機能、価格などで合理的な補聴器利用ができるよう活動している
8.実績が豊富で評判が良いか

補聴器販売店の実績や評判も、選択の重要な判断材料となります。長年の経験と多くの顧客からの信頼がある販売店は、それだけ質の高いサービスを提供している証拠です。
営業年数と取扱件数
営業年数が長いことは、その地域で長く信頼されてきた証です。また、年間の取扱件数が多い補聴器販売店は、それだけ多くの経験とノウハウを蓄積しています。
ホームページや店頭で、営業年数や取扱実績を公開している販売店も多いので、確認してみましょう。ただし、新しい販売店でも優れたサービスを提供しているところはあるので、営業年数だけで判断するのではなく、総合的に評価することが大切です。
インターネット上のクチコミ
SNS、Googleマップのレビューなどで、実際に利用した人の評判を確認することも有効です。特に、アフターサポートの質や、スタッフの対応についてのクチコミは参考になります。
ただし、クチコミには個人の主観が含まれているため、すべてを鵜呑みにするのではなく、複数の情報源を参考にして総合的に判断しましょう。仮にネガティブなクチコミがある場合でも、その後の販売店の対応を見ることで、誠実さに気づくことも。

知人からの情報収集や、医療機関からの紹介
身近に補聴器を使用している人がいれば、どの補聴器販売店で購入したか、サービスの質はどうかを聞いてみるのも良い方法です。実際の利用者からの生の声は、非常に参考になります。
また、かかりつけの耳鼻咽喉科がある場合は、信頼できる販売店を紹介してもらうこともできます。医療機関と連携している販売店であれば、医師も安心して紹介できると判断しているはずです。
まとめ:信頼できる販売店選びが、快適な聞こえへの第一歩

数多くのチェックポイントをご紹介しましたが、補聴器販売店を選ぶ際には、なるべく複数の販売店を比較検討することをオススメします。焦らず、じっくりと時間をかけて、あなたに最適な販売店を見つけてください。
販売店は、これから先、あなたの聞こえを支えてくれる大切なパートナーになる存在です。信頼できる販売店との出会いが、快適な聞こえと豊かなコミュニケーション、そしてより充実した日常生活への第一歩となります。
執筆
聞こえと暮らし研究所 編集部
聞こえや難聴に関する正しい理解を広めるとともに、補聴器をはじめとする聴覚ケアの最新情報や、快適な聞こえを支える工夫を発信しています。日々の暮らしに寄り添う情報提供を通じて、聞こえに悩む方々の生活の質(QOL)向上に貢献していきます。
執筆協力
横井 孝治
介護アドバイザー。All About【介護】ガイド。
長期にわたる両親の介護を通して身につけた有益な介護情報を発信・共有するため、2006年に株式会社コミュニケーターを設立。2007年に介護家族や介護予備軍向けの情報サイト「親ケア.com」をオープン。800回を超える講演活動のほか、各種メディアにも数多く登場。YouTube「親ケア.com【公式】チャンネル」は、登録者数2.9万人以上。